皮膚は外界からの物理的・化学的刺激から生体内を防御するバリア機能を有し
ているが、皮膚に塗布された成分の一部は表皮、汗腺、毛嚢を経由して真皮に到
達し、血管から吸収される。これを経皮吸収という。
表皮の厚さは約0.2mmで、上から角質層、顆粒層、有棘層、基底層の4つの層
から成る。化粧品の肌への浸透については、厚さ約0.02mmの「角質層」までしか
謳うことができない。
“角質層まで”“角質層のすみずみへ”というような表現は問題ないが、“肌の
奥深くへ”“肌の内側から”というような角質層よりも奥の層への浸透表現は、
効能効果または安全性の保証になるとして、医薬品等適正広告基準3(6)に抵触
する恐れがある。
問題のある表現として、事例1・2を示す。
事例1:「肌の表面、内部、さらに奥まで深く浸透することで、しっかり保湿
し、潤いのあるお肌へ導きます(化粧品、テレビ通販より)」。
注釈で“※浸透は角質層まで”とあるが、この表現は効能効果の保証として
医薬品等適正広告基準3(6)に抵触する恐れがある。
「基準3(6):効能効果等または安全性を保証する表現の禁止」により、「医
薬品などの効能効果等または安全性について、具体的効能効果等または安全性
を摘示して、それが確実である保証をするような表現はしないものとする」と
されている。
事例2:「浸透率を180%に大幅改善!<浸透力の高さを他社商品と比較>
(医薬部外品育毛剤、インターネットより)」
この表現は、他社誹謗として医薬品等適正広告基準9に抵触する恐れがあり、
使用前後の写真を使用しての効能効果の逸脱として医薬品等適正広告基準3(3)
に抵触する恐れがある。また、効能効果の保証として医薬品等適正広告基準3
(6)に抵触する恐れもある。
「基準9:他社の製品の誹謗広告の制限」により、「医薬品等の品質、効能効
果等、安全性その他について、他社の製品を誹謗するような広告は行わないもの
とする」とされている。また、「基準3(3):承認を要しない化粧品についての
効能効果の表現の範囲」により、「承認を要しない化粧品の効能効果についての
表現は、1961年2月8日薬発第44号都道府県知事宛薬務局長通知『薬事法の施
行について』記『第1』の『3』の『(3)』に定める範囲(いわゆる化粧品の効能
の範囲)を超えないものとする」とされている。
毛髪に関しては、“毛髪内部への浸透”というような表現は問題ないが、毛髪
に成分が浸透して、損傷部分が治療的に回復するような表現はNGである。